価値観や 体つき 手の大きさが
少しずつ違っているように
おひとりおひとりに合う道具の形も異なります。
日々の天気や、職人の気持ちも ひとつとして同じものは
ありません。
ささやかな積み重ねによって生まれた品が
使い手の方の元に渡り 、感動と共にお使い頂けることが なによりの喜びです。
特徴
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●ねじれ
佐助の鋏の特徴は、刃の裏の面につけられたプロペラのような「ねじれ」
です。真平らではなく、手仕事による微妙な曲線をつけることで、くい込ん
で切れるような構造になっております。
鋏は二つで一つになっていますので、はじめは片側の状態でそれぞれ
をつくり始めますが、対になることを意識していつも制作を進めています。
夫婦のようですね。
それぞれが各工程を経て整えられ、やっと一つになる時を迎える際には、
「かみあわせ具合」が寸分の狂いもなく交差するよう念入りに調整し、繊
細な「研ぎ」をすることで絶妙な切れ味を生み出します。
●鉄の種類と刃金付け(はがねつけ)
制作工程映像
異なる性質の鉄2種類を合わせる事で、切れ味のよさと耐久性を出します。
打ち刃物において重要なこの工程を『刃金付け』といいます。
「刃金(はがね)」 鋏の『刃』の部分 : 硬い鋼(はがね)を使用。 〔炭素の多い高炭素鋼〕
「地金(じがね)」 鋏本体(ボディー)の鉄 : 軟らかい鉄を使用。〔炭素の少ない極軟鉄〕
●刃の素材と焼き入れ
刃の素材は砂鉄系原料鉄を使用しております。
初代定次郎が学んだ鋼の技法を汲み、独自の焼入れ方法で刃の硬度を高めます。
●鋏の製造工程
特注品について
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●高肉象嵌(たかにくぞうがん)
本体に模様の形の溝を掘り、その溝に模様
の形の金や銀をはめ込みむ技法です。
立体的な文様を細工しすることで、より華麗
で美しいものを表現することができます。
古来より刀の鍔(つば)や火縄銃の装飾に
使われていた技法です。
●さび出し仕上げ
通常は黒打ちの状態で完成となる鋏を、ある条件の下で、2〜3年間かけて自然の錆を育てて、
表面を錆の膜で覆う技法です。内側を保護するためにも役目を果たすこの技法は、刀の鍔
(つば)などに使われていた表面処理の一種で、現代ではお茶釜の仕上げ等に、この加工
が使われています。自然の空気と風によって長い時間をかけて、変化を待ることでうまれた、
錆出し仕上げの鋏の表面は、肌触り柔らかく、使い込む程に手の脂によって艶をましてゆく、
独特の味わいがあります。
●乾漆塗仕上げ
漆に色粉を混ぜ、乾燥させた物をさらに
粉にして、それを鋏の表面に焼き付ける
仕上げ方法です。
あらかじめ、本体に鏨(たがね)で地模様
を掘り、わざと表面をざらざらとした梨地
状態にすることで、しっかりと漆を定着さ
せるます。
また、長期間ご使用になりますと、漆の表面が少しずつ摩耗しますが、予めほどこした梨地
の地模様が徐々に浮きあがって表れ、使い込む程に変化する風合いをお愉しみ頂くこと
ができます。
■用語■
1寸:
1寸=約3cm強。ワラビ手タイプの生花鋏で標準サイズ、五寸〜五寸五分。
輪のタイプ(古流型など)の花鋏で五寸が標準です。
心金(しんがね):